作図は中3の最後にもってきちゃったら?

根が素直で真面目なので、文科省の定めた学習指導要領に沿って作られた教科書にあわせて授業を考える。

1年生の直感数学というのはどうも気持ち悪くて駄目だが、我慢してとにかく教科書に逆らわずに授業をしてきた。

作図は、「なぜこの手順で目的が達成できるのか」という議論を2年生に持ち越して、方法だけを1年生で学ぶ、

普通に考えて意味がわからないが、偉い文科省の歴々が定めたことだから恐らく深い意味があってのことだろう。

そこで色々考えた結果、この単元は試行錯誤を体験させるのが目的だと理解している。

小学校で「テスト」というものを経験し、テストで高得点を取るには問題の解き方をたくさん記憶してその解法を与えられた問題に適応させるのが効率的だ。
どうやって解説するかを考えるより、似た問題を探して解答を読む方が早いのだ。
そして数学を学ぶとは解き方を覚えることだと思い込んでいく。

そこでここら辺で、「基本の作図だけ教えるから、あとはなんとか色々考えて自由にやってみ」と突き放す機会を作ろうという意図ではなかろうか。
「先生、この問題の解き方、まだ習っていません」なんて本気で言ってしまう生徒が何をしていいのか途方に暮れてしまうような問題に向き合わせる。
そして少しずつ、解らないなりに色々試してみはじめる--手を動かし始めるのをじっと待つ。

もう一つの理由は、これから2年生・3年生で初等幾何を学ぶ。
そこでは当然、図を描く。
そのために1年生で作図を学んでおくのだと理解していた。

しかし、昨今の状況を考えると、2つの理由がだんだん言い訳っぽく思えてきた。

試行錯誤を経験させる、あわよくば数学の問題なんて何も勉強していなくても普通の人生経験があれば色々考えればなんとかなることを気付かせたい。
しかし、そのためには時間が必要だ。
これがなかなか確保できない。(ここには人員配置の問題が大きいのだが……)

また最近は、2年生・3年生の図形の授業でも生徒に図を描かせない授業をすることが多い。
(そういう教員が多いと言うこと)
図形の授業なのにコンパス・定規を持ってこない生徒までいる。
授業プリントにすでに印刷されていたり、PCやタブレットで提示してしまうからだ。

1年生で作図を学んでおく意味は薄れた。

それだったら、1年生ではcinderella.2とか作図ソフトを導入して、簡単に綺麗な図を描く方法を学んだ方が良いのではないか。
そして3年の最後に中学数学の総まとめとして古典的作図に挑戦させる。
本来作図問題は、円周角も相似も三平方も2次方程式も総動員する必要があるものなのだ。

そして角の三等分問題も取り上げて、「不可能の証明」を数学ではできる。
それは高校数学で学んで欲しい。
こうまとめて卒業させる。

どうですかね。