服従の心理

服従の心理―アイヒマン実験 (河出・現代の名著)

服従の心理―アイヒマン実験 (河出・現代の名著)

数年前に、珍しく職場に新人が3人も来た。いつのまにか、歳だけはくっていた私はちょっと浮かれて、この新鮮な若者たちに何か伝えたいと思った。
かといって、毎晩飲みに連れて行って酔いに紛れて教育的指導をするだけの時間的精神的経済的余裕はなかったので、熟考3分の末、この本を1人1冊ずつプレゼントすることにした。読み終わったら、一緒にディスカッションしましょうということで。
この本は教育に係わる者たちの必読書の一つだと考えている。
この本は1つの心理学に関する実験の詳しいレポートです。その実験は「どのような状態で普通の善良な人が残虐な行為を行なうことができるか」というものを調べようとした物です。
その実験の途中から、人間がいかに権威によって与えられた正当な理由と、「命令された・依頼された・仕事だから」といった責任を転嫁できる理由があれば、みごとに普段の生活信条とかけはなれた行為も平然とできるという事実が浮き彫りにされてきます。
これは組織として効率的に行動するようにデザインされた人間の本質に近い物なのかもしれません。
ギロチンを発明したギロチン博士も、ガス室を発明したアイヒマンも、残虐な性行がゆえの発明ではないということが予想されます。むしろ、まじめで勤勉で、なおかつ不幸にも優秀だった。。。
新人3人にこの本を読んでもらいたかったのは、これから当然組織として動いてもらわなければいけないのだけれど、最後の最後の場面では自分で責任をとるという決意、これを胸に、日々精進してもらいたい。そんな気持だったわけです。

……ただ、結局、だれも読了してくれなかったみたいなんですけど(T_T)。うち1人は1年もたずに辞めてしまったし。