「式」という用語

どうも「式」という言葉の遣い方が小学校と中学校で異なるようだ。

「1000円を持って1個a円の饅頭を3個と100円のアイスクリームを買ったとき、残りはいくら持っているか。aの式で表しなさい。」
このような問題だと、問題文に「式で表せ」とあるのに反応して
1000-a\times 3-100 という誤答がよくある。
もちろん期待している正解は(900-3a)円 だ。

なのでおいらは「aの式で表しなさい。」とはわざと書かないか、場合によっては注釈をつけて「文字式の約束に従って表すこと」なんて追加する。

小学校では答を求める途中の過程をすべて「式」といっているのだろうか。

おいらが「式」という言葉を遣う場合の意味は「表」でも「グラフ」でもなく「式」ということだろうか。
対応が列挙された地図でもなく、絵でもなく、文章で表せということだ。

ただし省略された文章ね。
まぁ、面倒なのは中学1年のはじめだけだからどうでもいいか。

掛け算の順序

なんだかもう随分長いことtwitter で論争されているようだ。縫田さんのリツィートを読むだけだから検討違いの理解かもしれないが、「小学校では3\times2=6 が正解の問題で2\times3=6 と解答するとバツになる。怪しからん」という事のようだ。

‥‥場合によるんじゃないでしょうか?

 ただ足し算は非常に制約が厳しい*1かわりに可換律が保証されている印象だが、掛け算は何と何を掛けても自由なかわりに非可換な場合もあることを忘れてはいけないと思います。

 中学校で掛け算を取り上げるのは、負の数の導入の時。この時、次の3つの分類は取り上げます。

  • 1あたり量×いくつ分=全体量
  • これが3つとも単位が異なり、3つとも負の数を導入する意味があるもの。
  • 元の量×倍率=変化後の量
    これは最初と最後の単位が同じで、倍率は単位のないハダカの数。
    倍率には負の数を導入しても悪くはないが、あまり必要度は高くないモデル。
  • 長さ×長さ=面積、長さ×長さ×長さ=体積
    今まで学んだ掛け算で同じ単位同士をかける唯一の例。異なる単位が出てくる。これは負の数を導入する意味はほとんどないモデル。

そこで、負の数の掛け算を考えるモデルとしては「1あたり量×いくつ分=全体量」を選ぼうという流れになる。

今回はこの分類で順序の問題を考えてみる。

  この最後の長方形の面積求める場合など、縦×横でも横×縦でもなんの問題もないね。

3人が2列に並んでいる時に、全体の人数を求める場合も同じようなものだ。

 真ん中の例、「3万円の給料が2倍になった」はどうだろう。

3\times2が自然だと思うが、2\times 3もアリという感じがする。

数学だと「aの2倍」も「2のa倍」も計算すればどちらも2aになるので、そう感じるのかなぁ。

で、やっぱり議論が分かれるのが一番最初の「1あたり量×いくつ分=全体量」の場合でしょう。

具体的には速さ×時間でも時間×速さでもどちらでもいいのかという問題。

う~~ん。意見が分かれると思いますが、おいらはどちらでもいいに1票です。少なくともテストの答案をバツにするほどではない。

 

結局、たいした意見は書けませんでした。申し訳なし。

*1:完全に同じ単位同士でないと足せない

2乗に比例する関数の変化の割合の定理

具体的には次の定理

y=ax^2 において x\alpha から \beta まで増加するときの変化の割合は a(\alpha+\beta)

これ、そろそろ教科書にいれちゃっても良いのではなかろうか。

理由1 証明もお手頃

因数分解のちょうどいい(位置的に・難易度的に)演習問題だ。

理由2 基本と定理のセットとして

1次関数 y=ax+b には基本の変化の割合の求め方を学んだ後、定理として

y=ax+b の変化の割合は常に一定で、その値は a

という定理も学ぶ。

2乗に比例する関数は基本の求め方だけというのはバランスが悪い。

理由3 けっこう強力なので

テストで差がつく。
つまり教科書通りにしか教えないと、この定理を知らない生徒がいる。
基本通りに変化の割合を計算するのはなかなか面倒だ。
一方、塾に通っている生徒はまず知っているからあっという間に処理できる。
不公平だ。

理由4 どこを到達目標地点にするかの問題だが

中学3年生で用意できる大きな驚きの一つとして、「小学校で習った速さの公式は実は嘘だった」ということがある。

道のり÷時間で求めていたのは、いわゆる普通の日本語の「速さ」ではなく「平均の速さ」に過ぎなかったという事実は、こどもからおとなになる上で必ず知らなければならないショックな知識のひとつではなかろうか(^^)

では平均速度ではなく瞬間速度は何か。
それはグラフの点における接戦の傾きである。

ここまでは「変化の割合=傾き=速さ」を学んだあと、わりと簡単に辿り着ける。

そして、最初の定理をやっておけば、その接線の傾きにもすぐ進めるのだ。
\beta=\alphaの場合だから

y=ax^2 において x=\alpha における接線の傾きは2a\alpha

と、微分係数の手前まで進んでおくのが、中学校数学の目標地点として適当ではないかと思うのだ。

ちなみに昔塾で教えていた時は次の定理も必修だった。

y=ax^2上の2点A(\alpha,a\alpha^2)B(\beta,a\beta^2)を通る直線ABy=a(\alpha+\beta)x-a\alpha\beta

y=ax^2上の点A(\alpha,a\alpha^2)における接線はy=2a\alpha x-a\alpha^2

2次式の因数分解(つづき)

ゆとり時代に曾野なにやら夫婦のおかげで、中学校の数学から「2次方程式の解の公式」が消えた。
そこで、なんでもかんでも平方完成で解かなくてはならなくなり、数学の苦手な子は大変苦労をした。
(「公式」は数学が苦手な子のためのものなのだ)

ところが当時、高校の先生からは好評だった。
平方完成のテクニックは、高校で頻出するものだからだ。

現在は教科書に解の公式が復活しており、ax^2+bx+c=0a=1, b=2k の時に平方完成は使うように指導している。
分数式になると、約分で混乱する生徒が多いからだ。
(公式が多いとまた混乱してくるので、解の公式は一般形のみしか教えないことにしている)

この平方完成、因数分解にも当然応用できる。

例題

\begin{eqnarray*}
&&x^2+2x-323 \\
&=&x^2+2x+1-1-323 \\
&=&(x^2+2x+1)-324 \\
&=&(x+1)^2-18^2 \\
&=&((x+1)+18)((x+1)-18) \\
&=&(x+19)(x-17)
\end{eqnarray*}

324=18^2素因数分解してもいいし、20^2=400よりちょっと小さくて1桁目が4だから、12か18しかないけど、さすがに12^2=144は覚えているから18しかないな、でも良い。(確認はすること)

根拠

\begin{eqnarray*}
&&x^2+(\alpha+\beta)x+\alpha\beta \\
&=&\left(x+\dfrac{\alpha+\beta}{2}\right)^2-\left(x+\dfrac{\alpha-\beta}{2}\right)^2 \\
&=&(x+\alpha)(x+\beta)
\end{eqnarray*}
省略し過ぎ?
読者は教員を想定しているので、中学生は途中計算頑張ろう。

2次式の因数分解

以前、高須先生に教わった2次式の因数分解の方法をここにも書いておく。

ax^2+bx+c因数分解

  1. かけてac、たしてbになる2数p,qを見出す
  2. ax^2+px+qx+cと変形する。

これで高校レベルの問題から、中学レベルの問題になった。

私は高校の時は「たすき掛け」というものを習ったけれど、こちらの方が数段効率がいいように思う。
今の高校ではどう教えているのだろう?

例題

\begin{eqnarray*}
&&6x^2+x-2\\
&=&6x^2-3x+4x-2\\
&=&3x(2x-1)+2(2x-1)\\
&=&(3x+2)(2x-1)
\end{eqnarray*}

中学生も読む可能性があるので一応解説すると、
かけて6\times(-2)=-12たして1になる2数として-34を得る。
そこで+x-3x+4xと分解する。
あとは中学校でも学ぶ2項ずつまとめて共通因数を見出す手法である。

根拠

因数分解は展開の逆なのだから
\begin{eqnarray*}
(\alpha x+\beta)(\gamma x+\delta)&=&\alpha\gamma x^2+\alpha\delta x+\beta\gamma x+\beta\delta \\
&=&\alpha\gamma x^2+(\alpha\delta+\beta\gamma)x+\beta\delta\\
&=&ax^2+bx+c \end{eqnarray*}
これを逆にたどればよい。

\begin{eqnarray*}
ax^2+bx+c
&=&\alpha\gamma x^2+(\alpha\delta+\beta\gamma)x+\beta\delta\\
&=&\alpha\gamma x^2+\alpha\delta x+\beta\gamma x+\beta\delta \\
&=&\alpha x(\gamma x+\delta)+\beta(\gamma x+\delta)\\
&=&(\alpha x+\beta)(\gamma x+\delta)
 \end{eqnarray*}

問題は(\alpha\delta+\beta\gamma)x を \alpha\delta x+\beta\gamma x に分けるところだ。
\cases{\alpha\delta=p \cr \beta\gamma=q} はどのような数だろうか。
p+q=\alpha\delta+\beta\gamma=b
pq=\alpha\delta\beta\gamma=ac
証明終

a<b ならば √a<√b であることの証明

教科書では直感的な説明しかありません。
もしこれを中学3年生できちんと証明するとすればどのようにできるかということです。
知恵袋で質問した結果、次のような証明が見つかりました。

hi06112375さんの証明

b-a>0であるから、

\sqrt{b}-\sqrt{a}=\dfrac{b-a}{\sqrt{b}+\sqrt{a}}>0

したがって、\sqrt{a}<\sqrt{b}となります。

0<a<b ならば √a < √b中学校の教科書では直観的な説明しかない... - Yahoo!知恵袋

なるほどお見事ですね。
本来でしたら関数的に扱うのが自然なのでしょうが。

これを中学生向けにさらに優しく書き直したのが以下です。

証明

(\sqrt{b}+\sqrt{a})(\sqrt{b}-\sqrt{a})=b-a>0
上の式で\sqrt{b}>0,\sqrt{a}>0なので
\sqrt{b}+\sqrt{a}>0
したがって
\sqrt{b}-\sqrt{a}>0
\sqrt{a}<\sqrt{b}

√2が無理数であることの証明

よくある証明

\sqrt{2}=\dfrac{m}{n}と表せたとする。ただし(m,\, nは互いに素な自然数)
両辺をそれぞれ2乗すると
2=\dfrac{m^2}{n^2}
2n^2=m^2
したがってm^2は偶数である。
もしmが奇数であるならばm^2も奇数になるので
mは偶数である。
そこでm=2aとおくと
2n^2=(2a)^2
2n^2=4a^2
n^2=2a^2
したがってn^2は偶数である。
もしnが奇数であるならばn^2も奇数になるので
nは偶数である。
以上でmnも偶数であることが示されたが、
これはm,\, nは互いに素な自然数という仮定に矛盾する。
したがって
\sqrt{2}=\dfrac{m}{n}と表すことはできない。
すなわち\sqrt{2}無理数である。


この証明は問題はないと思うが、ちょっと冗長なのではないかと思った。
そして、
nが奇数であるならばn^2も奇数になるのでnは偶数である。」
の部分は丁寧に記述したらもっと長くなる。
\sqrt{3}ではもっと長くなる。

そこで、次のような証明を考えてみた。

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