御御御汁

28日読売朝刊の編集手帳で「御味御付」という言葉が出てきて,翌日29日の同欄で「何人かの読者の方から御御御付の間違いでは」と指摘があったと記述があった。そしてその根拠として「暮らしの中の日本語*1」からその語源が示されている。

昔,女房ことばで味噌のことを「おみい」と言い,「おみい」の「おつけ」(汁)がおみおつけになった。

また,「日本国語大辞典*2」でも御味御付と御味御汁の表記を載せていると書いてある。
実は,私も同じ疑問を抱いた。その理由は先日亡くなった杉浦日向子さんの著書を読んだからだ。読売新聞に疑問を寄せた方々ももしかしたら同じ本を読んだ同士なのかもしれないと思った。

「お江戸風流散歩道*3」からの引用。

江戸後期になり,一日に三度食べるようになった頃の江戸っ子の基本メニューの一例は,おおよそ次の通りです。
まず朝,一日に食べる量の飯を炊きます。炊き立ての白米を,特別に御をつけて御飯と呼びます。それに味噌汁。二種以上の具を入れたものを御御御汁と呼び,朝食の必須アイテムです。他にたくわんと納豆などを添えます。

杉浦日向子の江戸塾*4」にも同じことを書いています。

宮部 お味噌汁っていうのは,朝だけだったんですか。
杉浦 昼はほうじ茶,夜はお茶漬けで,昼夜とも汁物はつきません。江戸では「お味噌汁」とは言わずに,「おみおつけ」って言っていました。それがすごい字を書くの。「御御御汁」ですから。御が三つ続くということは,非常に価値のある食べ物だったということです。一日の活力の素になるもので,具は二種類以上ということになっていました。

杉浦日向子って人はもともとガロでデビューした漫画家*5だったのに,いつの間にかお江戸の専門家になってしまった人で,NHKの「お江戸でござる」の最後に出てきた人です。
確かに語源は「御味御汁」だったのかもしれませんが,杉浦さんが言ってるのだから「お江戸」では「御御御汁」になっていたということなのでしょう。それとも筆文字を読み損ねたか。

*1:

暮らしの中の日本語 (ちくま文庫)

暮らしの中の日本語 (ちくま文庫)

*2:ほしいけど,置く場所無いなぁ

*3:

お江戸風流さんぽ道 (小学館文庫)

お江戸風流さんぽ道 (小学館文庫)

*4:

杉浦日向子の江戸塾 (PHP文庫)

杉浦日向子の江戸塾 (PHP文庫)

*5:

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (上) (ちくま文庫)