多神教と一神教

もう1ヶ月以上あいてしまった。今夜こそちゃんと感想を書こう。
言われてみれば当然なのに,言われるまで気づかなかったことってある。それは実は「当然」ではないことなのだと思う。それに気づいた人は偉いのだ。
この本のテーマ自体がそのタイプの衝撃を私に与えてくれた。
日本やギリシャは神様が一杯いる多神教の国。キリスト教イスラム教は唯一神を崇める一神教。これらを並列的に捉えていた。しかし,著者は「一神教多神教から生まれた」という。言われてみれば,そりゃそうであろう。オリュンポスが12神に到達する過程でさえ,数々の政治ドラマの果てであろうし,ヘラクレステセウスの英雄譚の編纂も民族の形成と密接なつながりがあるはずだ。ここらへんは柳田国男の一つ目小僧の話や京極夏彦の河童の話*1を思い出した。
一般に神や妖怪は収斂していくものとしても,多神教から一神教へは大きな飛躍があるとこの著者は主張する。
また本筋ではない箇所だが,こんなところも目から鱗であった。ギリシャローマ神話と呼ぶし実際にローマの神はほとんど神話を持たない。みなギリシャからの借り物だ。ところがユピテルとゼウスの性格はかなり違う。ユピテルは助ける神なのだ。
これも言われてみればそりゃそうだ。ギリシャ人とローマ人は違う民族なのである。同じ神さまを祭っていること自体考えてみれば変な話ではないか。なんでこんな簡単なことに今まで疑問を持たなかったのだろう。仏教みたいな民族を超えた宗教を輸入したわけではないのだ。そうか,でも神様の性格は違うのか。そういえばゼウスはすけべ以外取り得なさそうな神様だったっけ。ギリシャ人はローマ人の家庭教師というイメージだけど,その神さまはローマの方が真面目で人に優しいようだ。

*1:小説はたいていすぐに捨ててしまうので,なんというタイトルの小説の中の話かは思い出せない。。。