道徳の授業で使われる「自分の番 いのちのバトン」

いのちの大切さを掴ませようという狙いの授業で,つぎの詩がよく使われます。小学校の国語の教科書に多く採用されている詩のようなので,「道徳 いのちのバトン」でぐぐると小学校での授業が多いですが,中学校でも取り上げられることがあるようです。


自分の番 いのちのバトン    相田みつを
  
父と母で二人
父と母の両親で四人
そのまた両親で八人
こうして数えてゆくと
十代前で、千二十四人
二十代前では----?
なんと,百万人を超すんです

過去無量の
いのちのバトンを
受けついで
いま、ここに
自分の番を生きている
それがあなたのいのちです
それがわたしのいのちです

みなさん。この詩を読んでどう思われますか?
詩としてならば良いのですが,これを授業で取り上げるとなると,私は違和感を覚えます。たくさんの人たちのつながりでいまこの命があるんだ…ということを伝えたいのはわかりますが,そのために手段を選ばないというのはまずいのではないか。
(現在,このページをよく読みに来てくださる方には不要の解説ですが,堪忍ください。ちょっと説明しておきます。)
仮に20年で一世代とすると,20代前は400年前。関が原の合戦をしているころですが,資料によるとこの頃の日本の人口は約1200万人。すると12人に1人は私のご先祖様だったということになります。
これではまだ「そうなのか!」と思う人もいるかもしれませんので,さらに20代さかのぼってみましょう。800年前ですから鎌倉時代です。相田みつをの計算をそのまま続ければ,2^{40}=約1兆です。当時の日本の人口は700万人程度,地球全体でも5億人いません。10億人超したのが産業革命以降ですから,30年代前で十分だったんですけどね)
授業としてこの詩を取り上げるからには,百万人ってのは嘘だけどね。と付け加えて欲しいものです。