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正方形の定義

私の勤務校で使っている教科書には長方形の定義が次のように書いてある。

4つの角がみな直角である四角形を長方形という。

これは間違いである。
授業の流れとしては中学2年になり,1年生の「直感数学」というわけのわからない段階を越して,ギリシャ数学が地球を統一したその所以を語る場面に入っていく。ここでのキーワードは「体系化」であり,その手段として「定義」と「性質*1」を引き剥がすことである。小学校ではこれをべったり一体化して学んできており,「長方形」という概念について漠然とはわかっていても,どれが定義で,どれが平行四辺形から継承された性質なのか,どれが長方形独自の性質なのか混沌とした状態である。これを整理整頓するのが中学2年生の数学だ。
入り口として,「二等辺三角形は二辺が等しく,二角が等しい図形だけれども,二辺が等しいのを定義とすれば,二角が等しいことは定理として定義から証明することができるんだよ〜ん」という内容をやってきたばかりだ。そこで「4つの角がみな直角」は酷い。
これは

定義:4つの角がみな等しい四角形を長方形という。
定理:長方形の内角はみな90°である。

と引き剥がさなくては。
どうしても「直角」を含めたければ,「3つの角が90°である四角形」かなと思うが,「4つの辺が等しい四角形をひし形という」という定義と対を成すためにも4つの角の方が優れているだろう。
ぐぐってみると東書の教科書の定義はやはり少数派のようだ。
ところが難しいのは正方形の定義である。よく見かけるのは

4つの辺が等しく,4つの角が等しい四角形を正方形という

というものだが,これは今までの流れで言えば,あまりに強すぎる定義だ。定義と決定条件は違うという声も聞こえてきそうだが,やはり定義とは研ぎ澄まされて余分な贅肉が無いものが良いのではないだろうか?
式で書いたとき,4つの等式を用いれば正方形は定義されるはずなのである。むろん候補はたくさん考えられる。例えば

4つの辺が等しく,1つの角が90度である四角形を正方形という

4つの角が等しく,対角線が直交する四角形を正方形という

……しかしどれも美しくない。正方形のもつ対象性が見えてこない定義なのだ。どなたかうまい考えがあったらご教授願いたい。
では私自身はどう教えているかというと,式で表現することはあきらめて

ひし形かつ長方形である四角形を正方形という

と文章で定義することにしている。
「4つの辺が…,4つの角が…」と展開しないところがミソである。具体的な条件でなく,集合のキャップでごまかしたわけ。

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追記:(2005.12.19)
このエントリーに対しコメントやトラバをいただきました。
http://d.hatena.ne.jp/redcat_math/20051216#1134693609
この赤猫さんにさらにトラバがついてます。
http://d.hatena.ne.jp/noripy/20051217/1134800189
のりぴぃさんの話は難しくて私には理解できませんが参考までに。
考えてみると,定義は自然な方が良いかもしれません。合同についても合同の定義は強く,定理である三角形の合同条件は余分なものがないという形ですものね。

*1:うち,価値あるものを定理と呼ぶ