アカトンボ

夏ももう終わりである。8月31日の夕焼けは大人になっても一番悲しいものであるが,9月になったらしっかり残暑が厳しくなった。しかし,それでもデパートは秋の新作を売り出すし,コンビにでは肉まんの販売を始める。
で,アカトンボをぐぐってみて,こんな文章を見つけた。

三島治療室便り 游氣風信
 余談ですが、国民的歌手の故藤山一郎さんは、この歌は決して歌わなかったそうです。
 「あかとんぼ」のアクセントは「か」にあるのですが、この歌では「あ」になります。これは日本語としておかしい、不自然であると、いかに山田耕作大先生の作品でも許せなかったようです。
 これ,私が依然聴いた話では,逆でした。山田先生,正しい発音を残すためにこの曲を書いたんだという話を聞いたことがあったんです。
 確かに,「赤」は「カ」だし,「ア」だったら「垢」だよね。そういわれて「アカトンボ」と言ってみると確かに「垢蜻蛉」って聴こえる。こりゃぁ,かわいそうだ。
新明解日本語アクセント辞典
この頃、「夕やけこやけの赤とんぼ」の曲でアが高いのは変だという人がいるが、前の版と同じく「アカトンボ」、《古はカトンボ》」のように伝統的な型も記しておいたので、作曲された当時はアが高かったのだと理解して頂けるだろう。
でも,調べてみるとすでにアクセント辞典でも,現在の発音は「垢蜻蛉」になっている。もう時代は戻らないのか?戻そうとするのは反動勢力と呼ばれてしまうのか?
山田先生の意思について書かれているページは見つからなかったです。かすっているのが,すでにキャッシュしか残っていない模様の下の文だけ。
Symnet no.1(googleのキャッシュ)
"赤とんぼ"の歌に秘められた話 枝重夫 より
 もう一つ面白い裏話を紹介しておきたい. " あかとんぼ" を発音する時,「か」にアクセントがあるのに,メロディーでは「あ」が高いのはおかしいのではないかと,團伊玖磨が,直接山田耕筰に伺ったところ,「自分が作曲したようにかとんぼと言うのが正しいのです.江戸時代から,東京ではかとんぼと言い,あとんぼとは言いませんでした.生粋の江戸っ子に訊いてごらん」といわれたという(好きな歌・嫌いな歌,224〜227頁,昭和52年1月20日,読売新聞社).
そこで彼が,生粋の江戸っ子である慶応義塾大学の池田弥三郎教授〔本学加藤学長は市立一中(現都立九段高校)で彼の一年先輩で親友であった〕ら二〜三の人に訊いてみたところ,やはり山田耕筰説が正しかったそうである.
(追記)三島さんよりコメントを頂きました。

上記で引用していただいた三島です。
あの文を読んだ名古屋芸術大学サクソフォンを指導している三日月先生という方から、山田耕作先生は日本語のアクセントにとても厳しかったと指摘されました。すると山田先生の常用されていた時代と地域では赤とんぼのアクセントはアにあったのかもしれません。しかし、藤山一郎氏が歌わなかったと言うことも何かで読みました。藤山氏は「蛍の光」も「戦争を知らない子供たち」も同様に批判され、毎年年末恒例の紅白歌合戦で最後の「蛍の光」の指揮をされていましたが、御自身は決して歌われなかったとか。余談ながら先ほど名前を挙げました三日月先生がソロリサイタルをされるとき必ず依頼されるピアニスト服部真理子さんは藤山一郎さんに可愛がられてよく伴奏されたそうです。ついでに服部真理子さんは東京芸大のピアノ卒でご主人はわたしの高校の同級生、芸大のサックスを卒業しています。くどくど申し訳ありませんでした。取り急ぎ。三島広志